無性に焼肉が食いたくなった。
コロナでそういう機会が激減してここ数ヶ月食っていない。
目の前で焼いた肉を白米でかっこんで茶色の魂に火を付けたかったのだ。
用事で神谷町だかに行ってクソデカ電波塔をついでに見た帰り、その気持ちが抑えきれなくなった。
溝の口の牛炭*1で一人焼肉はたまにやっていたが今は保土ヶ谷区民、少し遠いしあそこは平日の豚半額が肝だ。
いや違う。
俺は肉で、焼いた肉で、あの野蛮な文化で優勝したいのだ。
衝動のままに問い掛けたGoogle先生は優しく一つの答えを導き出してくれた。やはりGoogle先生は頼りになる。最近は企業wikiに脳をやられているけど。
俺はGoogle先生の導くままに、東横線に飛び乗り輝ける肉の世界へその一歩を踏み出したのだ。
30分後、俺は横浜駅のきた西口という過去二回しか使ったことがない出口に立っていた。
前職でみなとみらいだった頃に会社のクソ飲み会でしか使ったことがないので土地勘0だ。週2で横浜来てんのにラしか行かないからこうなる。
だがここでもGoogle先生は俺を導いた。いかがでしたかブログに魂は汚されていても身体は焼肉を教えてくれるのだ。
行き着く先は、ここだ。
「一人焼肉推奨店」の謳い文句を掲げるはこの焼肉ライク。なんかちょっと前くらいから偶に話題になってるっぽい。前にtwitterで見た。
梶ヶ谷から離れるちょい前に溝の口の駅にできてて行列できてたのもこれだった気がする。*2
Google先生に導かれるままに駅から店に向かう。ちっけーなオイ橋渡ったらすぐじゃねーかいい立地しやがって。
店の付近の通りでそれっぽいのを探す。一階だったはずだがってえええクッソ狭いけどここホントに大丈夫かよ。
ビビってちょっと通りすぎる。ちょっとトイレ行きたいし少し先のコンビニへ行くもトイレねえわ。
諦めて店に入るとちゃんと1名かどうか聞かれたので、完全に人見知り発動しながら静かに頷く。一番手前の席に誘導される。狭いなこれ。
システムはわかりますかと聞かれ「えっそんななんかあんの」と内心ビクビクしながら初めてですと伝え、流れを教えてもらう。単純に箸/お手拭きの場所とか注文方法*3の説明で安心。
色々ビビったが準備は成った。これより優勝の時間だ・・・!
先ずは水をコップに注ぎつつメニューを見る。セットがあんのか。焼肉屋でセットは女々か?いや一人じゃ、名案にごつ。
カルビとタンと白米とキムチとスープでセットになってるやつを選ぶ。白米大盛は値段そのままっぽいので迷わずそれを。他のオプションはいいや。
あと適当に肉単品を選んでいく。50g/100g/200g*4あるけどピンとこねーし全部ハーフでいこう。これが後に敗北者の証となるのを俺はまだ知らない。
ドリンクは喉の渇きが先に来てるからコーラで。後からよくよく考えたらダイエット系列とか出されたらどうしたんだ俺。ちゃんとコカが出る店で助かったな。
注文して少々、テーブルの凹みに合うようになってるトレイに乗って飯到着。クッソ狭くて大変だなホントこれ!あとコーラ来たけど水飲みきってねえ!
取り敢えずカルビからサクっと焼いて白米に乗せてお口にシューッ!超とは言わないけど中々エキサイティン。実に普通の味で悪くはない。
まあ久し振りの焼肉という感動で味の感想は大雑把なんてもんじゃないんだけど。昨日印鑑証明書取りに行ったのに印鑑登録証忘れてたくらい適当だ。
だがやはり焼肉はいい。文化の極みだ。肉とタレと白米最高。
ちょっとお腹膨れてくるとちょっと色々気になってはくる。火力が案外弱くてテンポが微妙だとか、流石にホルモンは微妙だとか、元々付いてる甘ったるいタレが濃いから追加でタレ付ける必要なかったなとか。
でも今はそんな事どうでもいいんだ。重要な事じゃない。俺は肉で白米をかきこんで優勝するんだ。
そろそろ終わりが見えてきたので追加注文を考える。あっちょっと待って案外金額あるなこれ?
ここで俺は気付いた。全てを悟ったのだ。
肉単品は50g→100g→200gだが値段は倍々ではないのだ。沢山食べて優勝するならば色々食べるなんてオシャンティーな真似はせず漢の一点突破を心がけるべきだったのだ。
認めよう。俺は誤っていた。
気付いた時、俺の目に映る焼肉ライクの光景は一変した。ここは疲れたサラリマンの魂の安らぎ、マッポーと化したネオサイタマのスシ・バーなのだ。横浜だけど。
誰に咎められることもなく、自身の裁量で満足を得るために独善的な注文をすることが求められているのだ。友人と飲みながら舌鼓を打つような店ではないのだ。
50g三種ではなく200g一種で腹を埋め、浮いた金額でドリンクを選択することで優勝するべきだったのだ。女々しくもハーフ50gを選択した時点でマケグミへの転落が確定したのだ。
今見るとこのクソ狭い一人分のスペースに途方もないゼンを感じる。俺達は社会の歯車から逃れられない。
俺は天然マグロの目をした元墨絵師の如くサガリをやめカルビと白米を追加し、席を立った。財布から出たのは野口3枚と220円。軽く頭を下げて無言で外に出る。
今回は誤ったが、しかしこの焼肉ライクは余りにも正しかった。
ケチってもいい、高くてもいい。しかし選択は誤るな、ただ一人の欲望のために好きな物をたらふく腹に入れろ。
格好を付ける必要も友人を気にする必要も無い、コーラビールコーラなんてのも思うままだ。財布は気にしておけ。
質も大したこと無いし値段もそこまで安くないけど、そこには日々を生きる泥臭い戦いの縮図がある。あったのだ。
満腹にはなったし何だかんだで気分はいい。また今度来ようと思う。近いし。
この経験を糧に次回の俺はカチグミになるだろう――。